(文・撮影=増渕由気子) 3月のリベンジを達成し、優勝した吉田ケイワン(埼玉・花咲徳栄) 決勝で闘う吉田ケイワン インターハイへ勢いを持ち込めるか
吉田は今年3年生、対する白井は2年生。年齢によるパワーの差が如実に出る重量級では、上級生の吉田が勝って当たりまえの構図だが、2ヶ月前の全国高校選抜大会の準々決勝では白井に敗れ、表彰台に上れなかった。吉田は昨年、夏のインターハイでは個人戦2位となり、秋の岩手国体で初優勝し、飛躍の1年だったが、今年はその出鼻をくじかれてしまった。
吉田は「矢内潤部長から『私生活から欠点をなくし、負ける要因をつくるな』と指摘され、改善を意識してきました」と、2ヶ月間の努力の結果が出たことをアピール。前回は、チャレンジャー精神の白井に主導権を握られて苦杯をなめたが、今回は主導権は握られても、ゾーン際で粘り、要所でタックルとバックポイントを決め、5点をもぎとっての完勝だった。
浮き出てきた私生活での課題。この2ヶ月間は、早く寝ることで翌朝の朝練も全力で取り組むことができ、食事も肉と野菜をバランスよく食べて体作りもしっかりやってきた。そんな吉田に、矢内部長は自ら打ち込み相手となって「常に見守ってくれた」と言う。
■レスリングでは同門の石黒との練習で力をつける
全国王者から陥落した悔しさを味わった選手が、同校にもう一人いた。昨年の高校四冠王者、石黒隼士だ。「隼士も落ち込んでいて、(全国高校選抜大会の)表彰式の時に『やるしかないよね』と言葉を交わしました」。それ以降、王座奪還という共通の目標を掲げて切磋琢磨してきた。
4月のJOC杯では大学生が主戦場のジュニアの部で決勝進出という健闘を見せ、100パーセントの実力を出せば、結果が出るということは身をもって知った。
「これまでは、勝つと不安になるタイプでした。『王者なのに負けたらどうしよう』と…。選抜で負けて初心に戻ったことで、レスリングの楽しさに改めて気づくことができました。これからはプラス思考でいこうと思います。今年は高校最後の夏です。インターハイで優勝して、家族や先生たちに恩返しがしたいです」。
一つの負けを乗り越え、負けた相手に勝って関東を制した吉田。最後の夏に向けて、さらに飛躍できるか―。